【特別対談・第1回】「すべてが当たり前ではない」小学5年生で人生が変わった日――広大発スタートアップ役員・中谷雄登の哲学

広島大学発スタートアップである株式会社スターベルズは、役員対談企画の第2弾として、執行役員を務める中谷雄登さん(広島大学総合科学部4年)をお迎えしました。聞き手は代表の井上遊星が務めます。現役大学生でありながら、弊社の執行役員として活動する中谷さんのルーツと、人生の大きな転機、そして現在の研究テーマに迫ります。


Q&A形式:第1回 中谷雄登のルーツと価値観を変えた転機

井上(聞き手): それでは、改めまして株式会社スターベルズ役員対談第2弾ということで、執行役員の中谷雄登さんをお迎えしての対談となります。よろしくお願いいたします。まずは、ご自身で自己紹介をお願いします。

中谷: 株式会社スターベルズ役員の中谷雄登です。広島大学総合科学部総合科学科4年です。よろしくお願いします。

井上: ありがとうございます。普段は広島大学の学生で、絶賛卒論を書いていらっしゃるんですね。中間発表が9月30日に控えているとのことですが、ちなみに、どのような研究をされているんですか?

中谷: 教育分野におけるデジタルハプティクス技術の開発と実装に伴う倫理的課題の研究です。

井上: 難しいですね。一言にまとめると、どのような研究でしょうか?

中谷: ハプティクス技術という最新の技術を教育分野に応用した際に、どんな倫理的な課題が起きるのかというのを検討し、概観するような論文になっています。

井上: なるほど。そもそも「ハプティクス」とは、触覚に関わる技術なんですね。

中谷: はい。「ハプティクス(Haptics)」という単語がそもそも触覚のような意味を持っています。デジタルハプティクス技術というのは、その触感覚などをデジタルに転送したり、再現したりするような技術です。

井上: 例えば、スマートフォンのバイブレーションや、画面を長押しした時に一瞬ブルっと震える感覚も、デジタルハプティクス技術の1例だそうですね。その技術を教育的な分野に落とし込んだ時に、どんな問題があるのかというところを研究されていると。ありがとうございます。さて、少し遡って、小学校時代はどんな学生でしたか?

中谷: 小学5年生までは、それこそただのサッカー少年でした。将来の夢は何ですかと聞かれたら、「サッカー選手」と即答するような少年でしたね。幼稚園の年中ぐらいからサッカーを始めて、ずっと外で遊ぶのが好きだったというのもあって、サッカーはめっちゃ好きでした。

井上: サッカーはプレイするのが好きだったと。

中谷: そうですね。ルールとかいまいち分かってなかったけど、ただ走ってドリブルするのが一番好きで、ずっとそればっかでした。

井上: その「小学5年生まで」という区切りが気になりますが、何かあったのでしょうか?

中谷: 小学5年生の時に首に腫瘍(しゅよう)ができて、大きな手術をしました。長期の入院をして、手術の影響もあって、激しい運動や人と人とが接触するような運動はやめようということになり、サッカーは引退しました

井上: なるほど。小学5年生でサッカーを引退し、半年ほどの長期入院を経験されたのですね。手術も4回されたとか。最初はどのような違和感があったのでしょうか?

中谷: 俺も気づかないぐらいの違和感はあって、ストレッチする時に少し首が痛いな、ぐらいだったんです。ある日、友達に後ろから冗談でバンって押された時に、首がグキッといってめっちゃ痛くて。痛みが全然収まらないので、市民病院に行ったら、手に終えないから大学病院に移ってくれという、「緊急ですぐ手術して」みたいな流れでした。

井上: 本当に「ええっ」という感じだったのですね。普通に生活していたはずが、急に人生が変わったと。

中谷: そうです。普通にこれからも毎日同じようにサッカーをしていくんだろうって思ってた生活が、本当に1日で急に変わった。もうその日から入院、という感じでした。パニック状態じゃないけど、「何が起きてんだろう」という、本当に天地がひっくり返ったような感じでした。

井上: その経験は、中谷さんの人生の中で一番の衝撃でしたか?

中谷: 衝撃は一番でかいですね。自分の人生の体験として一番でかいし、価値観が本当に変わりました。

井上: どのように価値観が変わったのでしょう?

中谷: それまで全てが当たり前だったから。それが全て当たり前じゃないんだなっていうのは、受け入れざるを得なかった。俺は別に悪いことしてたわけではなく、サッカーをしていただけなんだけど。

井上: それを理不尽と感じましたか?

中谷: たしかにサッカーはできなくなったけど、「めっちゃ悪い経験だったか?」と言われると、全くそんなことなくて、入院生活は苦しいこともあったけど、基本的には全てが新しかった。自分とは全く違う環境で、全く違う人生を送ってる人たちが存在するというのを身をもって実感できたことは、本当に価値観が変わった。世界って広いなっていうのをすごい実感しました。

井上: 視野が広がった、という感覚ですね。

中谷: そうです。いろんな人を見れたから、それが自分にとってプラスの経験になってるなって。入院し終わってからそう思えて、すごい良い入院体験だったなと。病気のことはむしろプラスだと思っています。

井上: しかし、サッカーという全てを失った喪失感もあったのではないでしょうか?

中谷: ま、確かに、それまでは自分にとってサッカーが全てだったから、それがなくなって「自分って何もないな」「何ができるんだろう」と思った時期もすごいあった。そういう喪失感みたいなものを、中学生の頃にすごく抱えていましたね。


次回の予告: 第2回は、サッカーを失った中谷さんが、中学時代に経験した「自分探し」の期間や、高校時代に決意した「勉強の3年間」、そして進学先として広島大学を選んだ意外な理由に迫ります。

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